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書籍&映画レビュー「十二人の死にたい子供たち」【ネタバレあり】

 

 

はじめに

 

話題の映画「十二人の死にたい子供たち」が1月25日に公開されました。
インパクトのあるタイトルに惹かれて、まずは原作を読んでみたのですが、非常に面白かったので劇場に足を運んで映画も観てきました。
今回は、その書籍と映画のレビューを書いていきたいと思います。

※ネタバレを含みますので、これから本や映画を観ようという方はご注意ください。

 

あらすじ

 

管理者サトシが運営する「自殺志願者サイト」によって、12人の子どもたちが廃病院に集まった。
彼らの目的は、安楽死。
その計画を実行するには、管理者サトシが絶対と決めている「ルール」が存在した。

・計画を実行する前に、挙手によって全員の意思を確認すること
・全員一致しなければ計画は実行できない
・一人でも反対する人がいる場合は、その場で話し合いをすること
・決められた時間になったら、また全員の意思の確認をすること
・全員の意見が一致するまで、これを繰り返すこと
・参加者はいつでも自分の意思で退出することができる

指定された廃病院の地下にある多目的ホールへと集まってくる参加者たち。
受付の金庫には番号札があり、ひとりずつその番号を取っていく。
そして予定時間の正午12時、1番から12番の番号が書かれたベッドがあるホールに予定通り12人が集まった・・・はずだったが、ひとつ不可解なことがあった。
それはすでにひとりの少年が1番のベッドに横たわっていたこと。

ということは、この部屋には13人の子供たちがいることになる。

「なぜここに13人いるのか、理由がわからないとスッキリした気持ちで最期を迎えられない。」
ケンイチの発言がきっかけとなり、子供たちは話し合いを始める。
そして、調べていくうちに13人目の参加者は殺人によって死んだのではないか?という疑惑まで浮上する。

集まった12人の中に「殺人鬼」が存在するのか?
果たして計画は実行できるのか?

 

読後の感想など

 

原作は、沖方丁(うぶかた・とう)氏により2016年に刊行されました。
凄惨さを感じさせる痛ましいタイトルとは裏腹に、サスペンスに溢れた超一級のミステリー・エンタテイメント作品です。
それでは物語のポイントをいくつかご紹介していきましょう。

 

抜群の出来のミステリー作品

 

作品の傾向としては、ミステリーの中でも「クローズド・サークルもの」と呼ばれる種類に属するかと思います。
何らかの事情で外界との接触を断たれた、「雪山の山荘もの」「嵐の孤島もの」と非常に近いですね。
自らの意志ではありますが、外界との接触を断った廃病院が舞台となり、死体を運び込んだ者、あるいは殺人を行った者が確実に12人の中にいる、という状況の中で、虚偽の発言に惑わされながらも犯人探しが行われていく過程はなかなかハラハラ、ドキドキで読み進んでしまいますね。

集まった12人の子供たちは、病気であったり、いじめであったり、家庭不和であったり、各自がそれぞれに「死にたい」理由を抱えており、その理由も物語の展開の中で明らかになっていくのですが、犯人探しという縦糸に死にたい理由という横糸を複雑に絡めた、しかし読者を混乱させることもなく飽きさせることもないストーリー構成は実に素晴らしいと思います。

 

子供達のキャラクター設定が秀逸

 

オドオドしたいじめられっ子、不良少年、ギャル、バンドの追っかけ、「委員長」タイプの秀才女子、・・・と、12人の子供達のキャラクターは見事にバラバラですが、「あれ、友達でこんなヤツいるな」と思わせる、本当にどこにでもいるような少年少女達です。
それだけに、自然と共鳴、共感を覚えることができ、違和感なくスーッと物語の世界に入っていくことができます。
また、普通の日常生活であればおそらく言葉を交わすこともないであろう異なる人種の子供達が、最初は反発し合って(と言うよりは敵意剥き出しで)いたのが、「事件解決」という共通の目的に向かって(イヤイヤながらも)協力していく中で、妙な連帯感が生まれていく過程が非常に読んでいて面白いところですね。

 

子供たちの成長の描写が感動的

 

絶望感を抱えて廃病院に集まった12人の子供達ですが、そこに13人目の「招かれざる客」がいるという事件に直面して、少しずつ心境に変化が現れます。
最初はケンイチ一人が「こんな状況では最期を迎えられない」と異を唱えるのですが、「今さら何を言うんだ」という感じで、それこそ袋叩きにでもあいそうな状態でした。
それでも、主催者サトシの決めたルール(一人でも反対者がいる場合は実行しない)に則り、全員で話し合いを始めます。
この13人目はいったい誰なのか。12人の中の誰が連れてきたのか。
この話し合い(犯人探し)を重ねていく過程で、互いの置かれている「死にたい」状況が少しずつ明らかになり、子供達の心境にも少しずつ変化が現れてきます。

この過程には大きくページを割いて、じっくりと読ませてくれるのですが、廃病院の中を探索したりすることにより場面に変化を持たせることが適度なスピード感が産み、飽きることなく、逆に「この先どのように展開していくんだろう」という期待感を抱かせてくれます。

話し合いの中で激しく意見をぶつけ合うことにより、自分自身や相手の人格を認識したり理解したりすることを知り、一歩一歩成長していく子供達の姿は非常に感動的です。

非常によくできたミステリーと書きましたが、実はそのミステリー的な部分はこの物語のある一方からの側面であり、実は子供達の成長の過程を描いたヒューマン・ストーリーである、という言い方が正しいと思います。

 

最後にはどんでん返しも

 

ここがこの物語の最大のポイントとなると思いますので、詳しく書くことは控えますが、最後には「なるほどねー」と思わずニヤリとしてしまうようなどんでん返しが待っています。

非常に後味の良い、爽快な読後感ですね。

 

映画「十二人の死にたい子供たち」

 

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原作がとても面白かったので、大きな期待を持って劇場に足を運びました。
杉咲花さん、橋本環奈さん、黒島結菜さんという新進気鋭の注目の若手女優がキャスティングされているのも、期待感を抱かせる大きな理由ですね。この3人の演技を観たいがために、と言ってもいいくらいです。
特に、超攻撃型の理論派「アンリ」」を、どちらかと言うとホンワカ、オットリ系のイメージがある杉咲花さんがどう演じるのか、興味津々でした。

それでは、映画の見どころを少し書いていきましょう。

 

ストーリーはほぼ原作どおり

 

子供達の「死にたい」理由で一部少し異なる部分があったり、「犯人探し」の過程が(おそらく時間の関係で)やや端折り気味になるところはありますが、物語の根幹となる流れは、ほぼ原作を踏襲しています。
子供達の「死にたい」理由が、原作では物語の中盤で「これから各自の死にたい理由を語り合おう」という、まとまった時間の中で一人ずつ語られるのですが、映画ではこの時間をカットして、各場面の中で上手く散りばめていましたね。
ただ、やはり全体的に「端折り気味」なのは、ストーリーがややセカセカとした印象になってしまって、少し残念でしたね。
特に、私のように原作を読んでから観た人には問題ないかも知れませんが、前知識なしで観に来た人には、次から次へと新しい事実が矢継ぎ早に出てくる結果となり、少々解りづらい印象になってしまったかも知れません。

 

若手男優陣/女優陣の熱演が素晴らしい

 

物語の性質上、登場人物は最初から最後まで12人だけです。
これは、途中で目先を変えることもできず、最後まで視聴者を惹きつけておくという点では非常にハードルが高いと思えるのですが、その難しさをまったく感じさせないストーリー構成であり、役者達の熱演でした。
特に、先ほど名前をあげた杉咲花さん(アンリ役)、橋本環奈さん(リョウコ役)、黒島結菜さん(メイコ役)の3人は、自分の「死にたい」理由の主張のために物語の終盤でかなり熾烈なバトルを繰り広げるのですが、いやー、迫力ありましたねー。正しいか間違っているかと言われたら決して正しくはない自分の主張を、強烈な己の信念を持って貫き通そうとする場面での演技(特に目力)は、圧倒されるものがありました。

物語の進行をリードする探偵役のシンジロウには新田真剣佑さんが抜擢されているのですが、こちらは終始押さえた演技でしたね。それでも、天才的な閃きと理論を展開する姿には、さすがに存在感を感じさせていました。

 

物語のクライマックス、最後の採決への過程が・・・?

 

できるだけネタバレを押さえて書きますので、多少もどかしい表現になりますことをご了承ください。

物語の終盤、アンリの「死にたい」理由から怒涛のバトルが展開されて、「この計画を実行するのか」という最後の採決へ向かっていくクライマックスを迎えます。
十二人の、それぞれに深い闇を抱えて幼少期を過ごしてきて、大きな人生の決断に挑むことを決心して集まった子供達が、ある未体験の事件に遭遇して、そして他の子供達のそれぞれの事情を真摯に受け留めて、この大きな決断を実行するべきかどうかを悩みに悩んで到達した最後の判決です。

ただ、その様子が(原作を踏襲して)納得いくように描写されていたかというと、若干の不満が残る結果となってしまいました。

アンリ役の杉咲花さんを始めとする俳優陣の演技には鬼気迫るものがあり、緊迫感、迫力は本当に最高なのですが、ただ、子供達が十何年間の歳月を経て身に付けてきた人生哲学を大きく揺るがすような心境の変化が我々視聴者に的確に伝わってきたかというと、どうでしょうか。子供達のこれまでの苦悩、葛藤があまりにも簡単に覆ってしまったような印象を受けます。

大きな心境を遂げるには大きな事件が一つあればいいのかも知れませんが、そこに至るまでの(伏線としての)時間の経過はやはり必要不可欠であると思います。しかし、映画(=2時間程度)という時間枠の制約が、この伏線部分をあまりに多くそぎ落としてしまったため、クライマックスの展開が非常に薄味になってしまったのはちょっと残念でした。

 

総合評価

 

大胆に若手俳優陣を起用し、全編十二人だけで一本の映画として成立させるというのは、ある意味、実験的・挑戦的であり、起用された俳優陣も十分にその期待に応えた作品だと思います。
時間的な制約のために、全体的に端折り気味で原作の重厚さが失われている印象は受けますが、若手俳優陣の熱演がそれをカバーしており、お金を払って劇場で観る価値は十分にあると言えるでしょう。

 

おまけ:TVのCMについて

 

TVのCMがかなり頻繁に流れているようですが、「密室ゲーム」「(死にたいけど)殺さないで!」といった宣伝文句は、原作の主旨とは外れた部分で視聴者の興味を煽るようで、あまり適切ではないと感じます。
確かによくできた密室モノのサスペンスではありますが、先にも書きましたがそれは側面でしかなく、物語の主軸はあくまでも子供達の成長の過程の描写であるということを忘れて欲しくないですね。

 

 まとめ

 

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今回は、「十二人の死にたい子供たち」についてレビューを書いてみました。

原作のほうは、重厚でサスペンスに満ちたストーリー構成と絶妙なキャラクター設定で、時間が経つのも忘れて読み進んでしまう傑作だと思います。

また、映画のほうは若手俳優陣の熱演が光る、ある意味実験的・挑戦的な意欲作だと思います。

どちらも非常に面白いので、ぜひお楽しみいただければと思います。