はじめに
私が住むマンションの前庭で、テッポウユリが大きな花をつけ始めました。
白一色の美しい花が朝晩の少し涼し気な風に揺られているのを見ると、夏の終わりが近いことを感じます。
ユリは、日本ではもともと食用(ユリ根)として栽培されていたのですが、幕末の頃にドイツの医学者シーボルトがその花の美しさに心を奪われ、自国に持ち帰ったところ、復活祭に用いる「イースター・リリー」として大流行したという記録が残っています。
それが逆輸入される形で、明治の末頃から日本でも鑑賞花として流行していったようです。
大きくて見栄えがよく、また香りも良いことから、お見舞いや贈答用としてもよく使われるユリの花ですが、時と場合によっては、ユリの花を贈ることがタブーとなっています。
そのあたりを少しお話ししましょう。
ユリの花の香りが良くないケース
ユリの花は花自体が大きいだけに、香りもやや強めです。しかし、その香りがタブーとなってしまうケースがあります。
大部屋に入院されている方へのお見舞い
病院へのお見舞いの場合、病院特有の匂いの中で、ユリの花の香りはかなり際立ってしまいます。相手が個室に入院されているのであればまだいいのですが、大部屋に入院されているとなると、同室の方の中には花の強い香りが苦手な方もいるかもしれないので、トラブルの元にならないとも限りません。
そういう意味では、大部屋に入院されている方へのお見舞いとしては、避けたほうが無難です。
飲食店の開店祝い
同じようにユリの花の香りがやや強いことから、料理の香りを大切にしている小料理屋さんや、ちょっと高級なお食事処への開店祝いとしては、避けるほうが良いでしょう。
普通のレストランや居酒屋などであれば、そこまで気を遣う必要はないかと思います。
また、いずれの場合でも、店の外に飾るようなスタンドでのお祝いであれば、問題ないですね。
ユリの花のつき方が良くないケース
病気の方へのお見舞いとして贈る場合、品種にもよりますが、ユリの花が下を向いて咲くことに、縁起が悪いと感じられる方もいます。
若い方はあまり気にしないのでしょうけれども、年配の方には、ユリの花が下を向いていることに「死」を連想してしまったり、咲き終わった後に花が丸ごと落ちることから「首が落ちる」を連想してしまう、などの理由で良くない印象を持つ方も多いようですので、下向きのユリの花は病気の年配の方へのお見舞いとしては避けたほうが良いでしょう。
最近では、品種改良によって上を向いて咲くユリも多く出まわっているようなので、それであれば問題ないですね。
文化の違いによるケース
日本では、ユリの花は冠婚葬祭に広く使われていますので、特定の意味を持つものではないのですが、例えばイギリスの人にとっては、白いユリの花は亡くなった方へ捧げる花、という習慣があります。
また、イギリス以外でも、白いユリの花一輪は「死者に捧げる花」を意味する場合もありますので、一輪ではなく、必ず二~三輪で贈るようにしましょう。
いずれにしても、贈る時には、贈られる方の文化や習慣によく注意する必要がありますね。
ユリの花の花粉に注意!
ユリの花には、大きくてしっかりとした黄色い花粉がたくさんついています。
お見舞いやお祝いなどでユリの花を贈る場合には、この花粉を事前に落としておくようにしましょう。
例えば飲食店などでは、開店祝いで綺麗に掃除をした部屋を花粉で汚すことになったり、花粉が料理の中に入ってしってせっかくの料理が台無しになってしまったり、と良くないことばかりです。
また、結婚祝いなどで贈る場合でも、花粉がウェディング・ドレスについてしまったりしたら大変です。ユリの花粉は油のような物質で粘着性がありますので、洋服などに付いてしまうとなかなか取れません。
贈った側の品位も疑われてしまいますので、ユリの花を贈る際には、花粉はちゃんと落としておくようにしましょう。
花言葉は気にしなくてOK
ユリも多くの種類がありますので、花言葉も種類によってはいろいろと違ってきます。
ですが、相手が花言葉によほど敏感な人でない限り、たとえ良くない花言葉でもあまり気にする必要はありません。
良くない花言葉は、花を贈っている時点で帳消しになっている、という考え方が今では一般的です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
いろいろと面倒だな、と思う方もいるかも知れませんが、贈る相手と状況を考えれば、それほど難しいことではないですよね。
お祝いに、お見舞いに、綺麗なユリの花を贈ってみてはいかがでしょうか。