はじめに
皆さんは「BCL」ってご存知ですか?
「BCL」とは、「BloadCasting Listenibg/Listeners」の略で、簡単に言ってしまうと、国内/国外の遠隔地のラジオ放送を受信して楽しむ趣味のことを言います。
1970年代にソニー、パナソニックといったメーカーが低価格で高性能なラジオを発売したことにより、主に小・中学生の間で流行しました。その後、ブームは沈静化していたのですが、当時の子供達が中高年になって、ある程度の金額を趣味に使えるようになった今、ブーム復活の兆しを見せているということです。
私も当時、かなりハマッたほうなので、今日はその頃を思い出しつつ、「BCL」について書いてみたいと思います。
ラジオ放送の基礎知識
まず、簡単にラジオ放送の基本的な話をしましょう。
ラジオ放送は「AM放送」「FM放送」「短波放送」などの種類があり、それぞれ使用する周波数によって下記のような特徴があります。
種類 | 周波数 | 特徴 |
---|---|---|
AM放送 | 526.5KHz - 1605.5KHz | ・障害物に強く、中距離放送向き。 ・雑音が入りやすく、音質が悪い。 ・受信機の回路構成が簡単。 |
短波放送 | 3MHz - 30MHz | ・障害物に強く、遠距離放送向き。 ・気象状況(電離層)の影響を受けやすく、 受信状況が不安定になりやすい。 |
FM放送 | 30MHz - 300MHz | ・障害物に弱く、遠くまで届かない。 ・音質が良く聞き取りやすい。 |
「BCL」の場合、普段では聞くことのできない遠隔地の放送受信を狙うので、上表で対象になるのは中・長距離向けの「AM放送」「短波放送」であることが多いです。
「BCL」の楽しみ方
それでは、ただ単純にラジオ放送を聴くという行為について、どのような楽しみがあるのか、お話しましょう。
遠隔地の放送受信
大気中の電波の伝播状態というのは、気象状況だったり、太陽の黒点の活動状況だったり、さまざまな要素の影響を受けて、刻一刻と変化しています。
この電波の伝播状態により、思わぬ遠隔地のラジオ放送を受信できてしまう時があります。
「AM放送」で言えば、ラジオ放送局の出力にもよりますが、通常電波の届く範囲は、だいたい都道府県内くらい、出力の大きな放送局でひとつの地方内(関東とか関西とか)くらいです。それが、電波の伝播状態が良い場合には、他府県や他地方のラジオ放送を受信できる場合があります。
例えば東京にいて、九州のラジオ放送が聴こえたら、ちょっと驚きですよね。
「短波放送」では、ラジオ放送局の出力さえ大きければ、全世界をカバーすることが可能です。現在でも、海外の多くの放送局が、海外向けの英語放送を行っていたり、日本向けの日本語放送を行っていたりしています。これらの放送は通常でも受信することが可能なので、「BCL」の醍醐味という点では、普段聞くことのできない海外のローカル局(自国の国内向け放送)を受信することですね。
ヨーロッパやアメリカ、オーストラリアのローカル局の放送が聴けるかも知れない、と期待しながら、夜な夜なラジオと向き合ってたものです。
ベリカードの収集
これが「BCL」の最大の楽しみ、と言っても過言ではありません。
国内/海外を問わず、ほとんどのラジオ放送局は、「受信報告書」というものを作成して郵送すると、「ベリカード(Verification Card)」と呼ばれる「受信確認証」を送り返してくれます。
この「ベリカード」が、風景だったり建造物だったりグルメだったり、その地方(海外の場合は、その国)の魅力あふれたカードになっていて、収集するのが非常に楽しいのです。
苦労してやっと聴くことのできた海外のラジオ局のベリカードが手に入った時の喜びは、言葉にすることのできない嬉しさですね。
※「ベリカード」は「QSLカード」ともいいます。
「受信報告書」「ベリカード」のサンプルが、以下になります。
受信報告書
特に決まった書式はありませんが、海外の場合には英語で書くということと、下表の必須項目を必ず記載する必要があります。
項目 | 備考 |
---|---|
受信者氏名 | |
受信者住所 | |
受信地 | ○○県○○市 国内放送の場合は詳細に |
受信日時 | 国内:JST(日本標準時)、海外:UTC(協定世界時) |
受信周波数 | |
受信設備 | 使用受信機(メーカー、型番)、アンテナの形式など |
受信状態 | SINPOコード(下記参照) |
受信内容 | その局の番組だと確認できるように |
意見・感想 |
SINPOコードについて
電波の受信状態を表現するコードで、5桁の数字(例:「55445」など)で表します。
各桁には、以下の意味があります。
桁数 | 意味 | 評価基準 | ||
---|---|---|---|---|
1 | S | Signal Strength | 電波の強さ | 5:極めて強い ~ 1:辛うじて聞こえる |
2 | I | Interference | 混信 | 5:なし ~ 1:極めて強い |
3 | N | Noise | 雑音 | 5:なし ~ 1:極めて強い |
4 | P | Propagation Disturbance | 伝播障害 | 5:なし ~ 1:極めて強い |
5 | O | Overall Rating | 総合評価 | 5:極めて良い ~ 1:使用できない |
ベリカード(受信確認証)
「受信報告書」を受領した放送局が、「確かにあなたからの報告書を受け取りました」という意味合いで発行するのが「ベリカード(受信確認証)」です。
どのラジオ局でも、自局の電波がどこでどのくらいの強さで受信できているのか、というのは非常に有用な情報となりますので、「受信報告書」にはおおむね好意的に対応してくれます。
それぞれのラジオ局で特徴のある美しいベリカードを発行しており、見ているだけでも楽しいものです。
記事の最後にもいろいろなベリカードを掲載しますので、ぜひご覧ください。
BBC(英国放送協会)からの受信確認証
上記「受信確認証」の絵柄
「BCL」専用受信機(ラジオ)
「BCL」の流行時、ブームを支えていたのが(中高生でも手が出せる)低価格の「BCL」専用のラジオを発売していたメーカーでした。
中でも
■ ソニー「スカイセンサー」
■ ナショナル「クーガー」
この2機種が双璧でしたね。
どちらも価格的には20,000円前後くらいで、お年玉やお小遣いを貯めたりして手に入れた中高生も多かったのではないでしょうか。
ソニー「スカイセンサー5800」
短波放送の受信能力においては、他機種と比べて頭一つ抜け出ていた感じです。
近未来的なクールなデザインで、女性にも人気がありました。
ナショナル「クーガー7」
本体上部に設置された中波放送受信用の「ジャイロアンテナ」が最大の特徴ですね。
ミリタリー調で、前面に大きなスピーカーを配したデザインは、かなりインパクトがあってファンも多かったです。
まとめ
「BCL」について、ご理解いただけましたでしょうか。
「お宝探し」的な遠隔地のラジオ放送の受信であったり、収集癖を刺激するようなベリカードのデザインだったり、あまりお金をかけずに、いろいろな楽しみ方のできるのが「BCL」の良いところだと思います。
興味がある方は、ぜひトライしてみてくださいね。
付録(いろいろなベリカード)
ラジオ・オーストラリア/オーストラリア
ボイス・オブ・フレンドシップ(友情の声)/アメリカ・サンフランシスコ
ドイチェ・ベレ(ドイツ国営放送)/ドイツ
ラジオ・モスクワ/ソヴィエト連邦
ラジオ・ネザーランド(オランダ放送)/オランダ
ラジオ・シンガポール/シンガポール
北京放送/中国
福井放送/福井
熊本放送/熊本
琉球放送/沖縄
長崎放送/長崎
宮崎放送/宮崎
ニッポン放送/東京
(終了)