はじめに
ここ数年、新しい夏の行事として「夏越ごはん」なる物が囁かれるようになってきました。
基本的に日本人はお祭り好き、行事大好きで、特に「食」に関する新しい行事のブームには軽々と乗せられてしまうという民族です。
節分の時の「恵方巻」なんていうのも、騒がれ出した当初は「へー?」という感じでしたが、今ではその時期になれば何の違和感もなく街中に並んでいますからね。
果たして、「夏越ごはん」は市民権を獲得することができるのでしょうか。
少し、見ていきたいと思います。
夏の伝統行事「夏越の大祓(なごしのおおはらえ)」
「夏越の大祓」は「水無月大祓(みなづきおおはらえ)」とも言い、穢れを人形(ひとがた・人の形に紙を切り抜いたもの)に託して、茅の輪(ちのわ)をくぐり、心身を清め、「大祓詞(おおはらえのことば)」という祝詞(のりと)を唱え、罪や穢れを祓い、年越の大祓までの半年を新たな気持ちで過ごすことができるように祈る神事です。
6月は、夏の暑さがはじまり、心身が疲れたり気力が衰えるなどし、病気の流行期と考えられており、これから来る夏を病気などをせずに乗り越えられるようにという願いが込められています。
由来は神話の伊弉諾尊(いざなぎのみこと)の禊祓(みそぎはらひ)にまで遡るそうですが、新暦に移った現在でも、6月30日ごろ日本各地の神社で行なわれている伝統行事です。
茅の輪くぐり
日本各地の大きな神社では、6月30日に「茅の輪くぐり」の神事が行われるところがあります。
「茅(ち=かや)」は茅萱(ちがや)菅(すげ)薄(すすき)などの総称で、「茅」を束ねて作った直径2~3mの輪をくぐり抜けて罪やけがれを取り除き、心身が清らかになるようにお祈りするものです。
東京・湯島天神の茅の輪
「夏越ごはん」とは
上で書きました「夏越の祓」の時に食べる行事食として、公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構が4年前に提案を始めました。
「夏越の祓」にちなんだ食事をとることで、無病息災を祈願し、暑い夏を乗り切るエネルギーをチャージすることが目的ですが、米の消費が減る夏こそごはんへの関心を高めてもらおうという目的もあり、外食店やスーパーでの取り扱いは倍増したということです。
一般的に「夏越ごはん」とは、この写真のようなものを指します。
まあ、言ってしまえば、「かき揚げ丼」なのですが。
このかき揚げには、いくつかルールがあります。
□ 「茅の輪」をイメージした丸いかき揚げであること。
□ 「茅」をイメージした緑の夏野菜を使うこと。
□ 邪気を祓うと言われる赤い夏野菜を使うこと。
ごはんについては、
□ やはり邪気を祓うと言われる雑穀を含んだご飯にすること。
また、タレについては、
□ 百邪を防ぐと言われるショウガを入れること。
これらの条件を満たしたものが、「夏越ごはん」なんですね。
和食系のファミリー・レストランや、大手スーパーなどでは「夏越ごはん」が登場しているところもあるようです。
テレビなどで特集を組まれることも増えたため、今年は扱う店も去年と比べて倍増しているらしいですね。
まとめ
「夏越ごはん」、いかがでしたでしょうか。
ここまで書いてきましたように、「夏越」の意義としては、1年の半分を過ぎたところで、残り半分を新たな気持ちで健康に過ごせるようにリセットしましょう、ということで、非常に有意義な行事です。
「夏越ごはん」が注目されて、この「夏越」の行事が定着していくのであれば、それはとても良いことだと思えます。
「食」に関してはブームに弱い日本人ですから、「夏越ごはん」も意外と早く市民権を獲得してしまうかも知れないですね。